甲府地方裁判所 昭和60年(わ)136号 判決 1985年10月25日
国籍
韓国
住居
山梨県中巨摩郡竜王町富竹新田九一五番地の七
会社役員
西本公司こと李洙
一九四八年一〇月二六日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官林真琴出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年二月及び罰金四、〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、山梨県甲府市中央一丁目六番一〇号ほか二箇所において、「パチンコジャンボ甲府店」などの名称で遊技場を経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上
第一 昭和五六年分の実際総所得金額が四四、九七七、〇八一円、分離課税による短期譲渡所得金額が一四、一六〇、〇〇〇円あったのに、昭和五七年三月一〇日、同市丸の内一丁目一一番六号所在の所轄甲府税務署において、同税務署長に対し、昭和五六年分の総所得金額が一三、五五七、七八一円、分離課税による短期譲渡所得金額が一四、一六〇、〇〇〇円でこれらに対する所得税額が一一、二一四、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額三〇、九一四、九〇〇円と右申告税額との差額一九、七〇〇、四〇〇円を免れ
第二 昭和五七年分の実際総所得金額が七六、一四八、五二九円あったのに、昭和五八年三月一〇日、前記甲府税務署において、同税務署長に対し、昭和五七年分の総所得金額は一二、九四五、六九一円の純損失であったため納付すべき税額はない旨の虚偽の所得税損失申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額四一、六三二、五〇〇円を免れ
第三 昭和五八年分の実際総所得金額が一七〇、九〇七、四二七円、分離課税による長期譲渡所得金額が一〇、三二〇、〇〇〇円あったのに、昭和五九年三月一二日、前記甲府税務署において、同税務署長に対し、昭和五八年分の総所得金額が一五、七三三、七三六円であるが、昭和五七年分の純損失一二、九四五、六九一円を繰越控除して課税所得金額は一、四九一、〇〇〇円、分離課税による長期譲渡所得金額が一〇、三二〇、〇〇〇円で、これらに対する所得税額が二、二三六、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、同年分の正規の所得税額一一四、三五八、九〇〇円と右申告税額との差額一一二、一二二、三〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
1 被告人の当公判廷における供述
2 被告人の検察官に対する昭和六〇年五月九日付及び同月一〇日付(五通)各供述調書
3 久津間隆子、保坂寿、河野洋美及び小沢美文の検察官に対する各供述調書
4 大蔵事務官作成の調査書一六通
5 大蔵事務官作成の証明書
6 検察事務官作成の報告書
判示第一の事実について
7 押収してある昭和五六年分所得税確定申告書一通(昭和六〇年押第四七号の一)及び昭和五六年分所得税青色申告決算書一通(同号の二)
判示第二の事実について
8 西本きみ子こと呉相伊及び丸岡京子こと李京子の検察官に対する各供述書
9 押収してある昭和五七年分所得税損失申告書一通(同号の三)及び昭和五七年分所得税青色申告決算書(同号の四)
判示第三の事実について
10 押収してある昭和五八年分所得税確定申告書一通(同号の五)及び昭和五八年分所得税青色申告決算書一通(同号の六)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも所得税法二三八条一項に該当するところ、それぞれ所定の懲役刑と罰金刑を併科し、それぞれ罰金刑について情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑につき同法四八条二項によりそれぞれ五〇〇万円をこえその免れた所得税の額の罰金額を合算し、その刑期及び罰金額の範囲内で、被告人を懲役一年二月及び罰金四、〇〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予することとする。
よって、主文のとおり判決する。
昭和六〇年一〇月二一日
(裁判官 上田耕生)